新潟食材の持つ圧倒的な力を多くの人に知ってもらいたい。
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オープンから約3年。若手料理人の注目株に。
妙高市の新井駅からほど近い住宅街。こぢんまりとした佇まいに臙脂(えんじ)色の暖簾が目印の日本料理店がある。席数はカウンターが5席、4人掛けのテーブル席が4つで16席。「席に余裕はありますが、昼は3〜4組、夜は2組までお受けすることにしています。夫婦二人でやっていることもあり、きちんとした料理とサービスを提供することを考えると、これが精一杯なので」と話すのは、『割烹 西和喜』店主の西脇 幸喜さん。
オープンして約3年、その評判は徐々に広まっていき、地元をはじめ新潟県内外の美食家やグルメたちを唸らせるお店に。予約の数には波があるものの、おおむねコンスタントに予約が入っているそう。2024年3月には「ローカル・ガストロノミー」を体現する飲食店を表彰する「新潟ガストロノミーアワード」において、「若手シェフ部門30」に選ばれている。
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両親との約束は「お店を持って独立すること」。
高校生の時、パティシエになりたいと製菓と調理の専門学校へ入学した西脇さん。両親との約束は、「必ず店を持って独立すること」だった。「そういう前提でこの道に入ったので、独立は早くから考えていましたね」。ある日、和食の実習で魚を初めて捌き、「あまりの美味しさに衝撃を受けてしまって」と日本料理専攻にコースを変更。卒業後は和食、特に魚料理を極めるべく、県内の料亭や飲食店で腕を磨いた。
「いずれ店を持ちたいと考えてはいましたが、30才前に独立するとは考えていませんでした」と話す西脇さん。しかし、料理人となって8年目のある日、現在の店舗が売りに出されていることを知る。「話を持ってきてくれたのは父の同級生の金融機関さん。父や祖母が資金の協力もしてくれて。若かったし、もう少し修行しても良かったのでしょうけど、腹をくくって独立することにしました」
コースのみ&完全予約制にすることで、やりたいことが可能に。
店舗を手に入れた2カ月後に勤め先を退職し、本格的な開業準備に入った西脇さん。物件は店舗兼住居だったため、店舗〜調理場部分だけでなく、住居部分の改装も進めた。冷蔵庫の納品が遅れるなどトラブルがありながらも、2021年10月にオープン。翌年には現在サービスを担当している奥様と結婚するなど、人生の大きな節目を迎えることとなった。
オープン当初は予約なしのお客様も受け入れ、アラカルトメニューも用意していたという西脇さん。「売上のためには必要と思っていたんですけど、ほとんどコース利用のお客様しかいなくて」と話す。それならと思い切って完全予約制に切り替えたところ「出るかどうかわからない食材の仕入れがなくなったので、価格を気にせず思い切って仕入れができるようになりました」といい方向に回り始めたという。こうして西和喜では料金をリーズナブルに抑えながら、質の高い食材を使った料理が楽しめるように。当然ながら評判となり、インターネット上には「味、コスパ、接客全てが抜群」「最高のひと時を過ごすことができる」との感想が上がる。先述の新潟ガストロノミーアワードでも、「上越を訪れたならマストな割烹の一つである」との評価を得た。
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小さな街で、どれだけ地元利用を増やせるかが課題。
「新潟は食だけで観光に来てもらえる県。妙高でこんなに美味しい魚が食べられることを知ってほしいですね」と話す西脇さん。信用保証協会から受けた支援の中で、最も役に立ったことは「SNSの活用」だったそう。特にインスタグラムの重要性を知り、情報発信には力を入れている。西脇さんの料理写真を見たいがためにインスタグラムをはじめたという年配客もいたそうで、「お魚だけでも、春夏秋冬で種類も美味しさも違うし、適した料理方法も異なります。四季折々、新潟の食の豊かさを発信していきたいです」と話す。
同時に、地元のお客様を増やしていくのも課題。「この街で完全予約制の店はうちだけ。親しみやすさと、料理の質とのバランスをいつも考えています」と西脇さん。お弁当やテイクアウトの他にも、他店とのコラボ営業、イベントへの出店など、割烹らしからぬ試みも行っており、若さならではの柔軟な発想力と旺盛な向学心を感じさせる。この先もますますファンを増やしていくであろう、割烹 西和喜。早めの予約が必要になりそうだ。
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新潟県信用保証協会のサポート〈 割烹 西和喜の場合 〉
新潟県信用保証協会のサポート
●SNS発信など広報のアドバイス(外部専門家派遣)
担当者からのコメント
イベントなどにも積極的に出店され、妙高地域を盛り上げている料理店です。お店や食材のことをどう発信していくか、奥様と二人三脚で考えていらっしゃる様子がとても印象に残っています。また、こだわりのお料理と温かい雰囲気が魅力的なお店は、地域の方と話しているとよく話題に上がります。事業のさらなる発展を今後も応援しています。
創業を考えている人にアドバイス
自分で情報発信ができる時代、積極的なPRは大切!
SNSによる情報発信がマストなこの時代。発信内容や運用方法を学んで、効果的な発信を目指しています。料理が美味しいのはもちろんだけど、見栄え、ボリューム、値ごろ感など、お客様はいろんな要素を見て来店する。そういったものを意識するようになりました。また、料理の質は下げたくないけれど、入りやすさの敷居は下げたい。なのでインスタグラムのストーリーズは結構フランクな感じで投稿しています。
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割烹 西和喜
設立:2021年10月
所在地:妙高市東雲町7-5
業務内容:飲食業
新潟の魚介類、地元の食材を中心に組み立てることで、四季折々の地域の魅力を表現する和食のお店。昼は2,800円のおまかせ膳と5,000円の昼会席、夜は6,600円と11,000円の2コースのみで、前日までの完全予約制。
店名・屋号の由来
地元にも同じ名字が多く、覚えてもらいやすいので「にしわき」を屋号にしました。ただ、最後の文字を祖父と自分の名前に入っている「喜」にすることにはこだわりました。ここまで来れたのも家族のサポートのおかげ。その感謝の気持ちを忘れたくないですね。