新潟県信用保証協会

創業支援事例紹介

「お店をやりたい」という漠然とした夢。声に出すことで、はっきりと形になった。

はなの台所/ 店主 酒井清子さん

4人目の子どもの育休中に、人生を見つめ直して。

住宅街の中にナチュラルに溶け込む、温かみのある店舗。旬の地元素材を使った手づくりのランチ・お惣菜を提供する「はなの台所」は、2021年夏にオープンした。オーナーの酒井清子さんは元・研究員。新潟大学農学部・大学院を卒業した後は、製薬会社、新潟県立大、新潟大、新潟薬科大で、食品や薬品の研究の仕事をしてきた。「食品の研究はしてきたけれど、飲食業の経験はありませんでした。でも両親が飲食業をやっていたこともあり、ずっとお店をやってみたいというのは頭にあって」。

きっかけとなったのが4人目の子どもを出産した時。「育休を取ったのですが、その時に自分の人生やこれからのことをじっくり考えたんです。一度しかない人生で、自分がやりたいのは飲食店だと」。周囲はもちろん反対。「定年後にやればいいじゃないか、といった声もあったんですが、健康なうちから始めないと意味がないと思って。最終的には夫が応援してくれました」。しかし、どんな飲食店にするのか、まだ漠然としたままだった。

相談して初めて知った、飲食店経営の厳しい現実。

育休から復帰して働きながら、最初に相談したのは新潟市産業振興財団(新潟IPC財団)。「飲食業をやるには、最低でも売上がこのくらい立たないと営業できないとか、資金の回収も時間がかかるということを知りました。それに店舗が自前なのか賃貸なのかで、利益が相当変わってくるということも」と話す。

「お金がこんなにかかるんだ…!」と驚いたものの、ひるまなかった酒井さん。「とにかく飲食業界のことを知らないと」と長年続けた研究職を退職し、以前から大好きだった自然派食品店のパートに応募。さらに系列のパン店も掛け持ちするように。「パン店は常に人手不足の状態が続いて、とても厳しかったけれど本当に勉強になりました。接客、仕込み、レジの精算など、いろいろな業務を体験できてよかったです」。その後は人気のイタリア料理店でデリを作るなど、徐々に経験を積んでいった。

多くの経験や出会いの中で、固まっていった理想の形。

いろいろな場所で経験を重ねるうちに、次第に店のイメージが固まっていった酒井さん。なかでも大きな影響を与えたのが、協同組合「人田畑(ヒトタハタ)」との出会いだ。「勤務先に野菜を出荷していた農家さんと知り合いになって。そこから人田畑の経理・事務、そして受注管理やPRを頼まれるようになったんです。特にこの時の事務経験が、お店の経営にとても役立っています」。新潟で頑張っている農家さんを応援したい。農薬や除草剤を使わず、手間ひまをかけて育てた農作物を食べてもらいたい。そんな想いが酒井さんの中で大きくなっていった。

また、研究員を退職して2年が経ったころ、人づでに「土地があるので買わないか」という話が舞い込む。そこから話が一気に進み、資金調達などの開業準備が本格的になっていった。まず夫とも相談の上、これまで住んでいた自宅のローンを完済(後に売却)。新たに住宅ローンを組み、銀行からの融資を得て、店舗兼自宅を完成。2021年のオープンにこぎつけた。

長く続けるために、笑顔を絶やさず無理のない範囲で。

新潟県信用保証協会とのつながりは、開業資金の調達から。全額自己資金での開業も考えたが、「知り合いからも、新潟IPC財団からも、『お金を借りてやったほうがいい』と言われました」と酒井さん。「実際に飲食店を始めてみて、その意味がよく分かりました。カツカツだった資金繰りにも余裕が出たし、安定した収益という目標ができます」「今は研究員時代より収入は減ったけれど、返済はできていますし、しばらくはこのペースで続けていければ」と話す。

当初は「自分と同世代の女性や子どもを持つお母さんにくつろいでほしい」と考えていたが、想定外のこともあった。「近所のシニアの方やファミリーも意外と食べに来てくれるんです。他の飲食店では食べない子が、うちのは食べると言われることも」。将来的にはメニューを増やしたり、季節感をもっと出したり、夜の営業も本格的にしていきたいと考える酒井さん。「お客様に笑顔で提供するためには、私自身も楽しく笑顔でやっていかなければ。家族のためにも、お客様のためにも、無理のない範囲で続けていきたいと考えています」

新潟県信用保証協会のサポート〈 はなの台所の場合 〉

新潟県信用保証協会のサポート

●創業計画のアドバイス
●販促、顧客管理方法のアドバイス
●創業後のモニタリング、フォロー

担当者からのコメント

ママ友、前勤務先などの「人とのつながり」を大切にしていらっしゃるというのが第一印象です。4児の母でいらっしゃることもあり、幅広い年代での人脈を形成し、その方々に利用してもらえるようお店づくりを考えている様子が窺えました。お忙しい共働き世代の方々には、お惣菜のテイクアウトもおすすめです。

創業を考えている人にアドバイス

夢や目標を話すことが、出会いを呼んでくれる。

とにかく人に自分の夢を話すことです。どの職場でも働く前に必ず伝えていたのが「将来お店をやりたい」「飲食店経営を勉強したい」ということ。計画が甘いとか、失敗するとか言われますが、話したおかげで、皆さんからいろいろなアドバイスや情報をいただくことができました。また、いろんな人との出会いを大切にすること。「人田畑」との出会いもそうですが、この土地も夢を話していたから巡ってきたもの。多くの人との出会い、そして協力があるからこそ、今の形があります。

はなの台所

設立:2021年7月
所在地:新潟市秋葉区荻島3-16-9
業務内容:飲食業

農家から直接仕入れた米や野菜を使って、家庭料理をベースにしたランチ、お惣菜、お弁当を提供。自家製の味噌やマヨネーズをはじめ、調味料も厳選したものを使っている。週2日は夜の営業も行っており、居酒屋としても利用もできる。全18席(2022年現在、コロナ対応のため12席)。

店名・屋号の由来

私の旧姓は「花森」なので、ずっと「はなちゃん」と呼ばれていたんです。大学生の頃から料理が好きで、アパートで料理を振る舞うので「居酒屋はな」と呼ばれていたことも。私の作る家庭料理で、働くお母さんにゆっくりした時間を提供したい。そんな思いから「台所」としました。

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