新潟県信用保証協会

創業支援事例紹介

個性的で、開放的で、刺激的。豊かなクラフトビール文化を広めたい。

株式会社 醸燻酒類研究所/ 代表取締役・醸造責任者 岩田貴之さん

ホップの香り豊かなアメリカンスタイルのビールを醸造。

十日町駅から徒歩5分ほど、本町商店街の中にあるこぢんまりとした建物。中に入ると、小さなカウンターと6席のテーブルの奥に、大きなビールタンクがずらりと並ぶ。300リットルのビールが醸造できるタンクが5つあり、現在はそれぞれのタンクで異なる5種類のビールを醸造している。主力とするのは、ホップの香りを活かした近年人気の「IPA※」。
※アイピーエー=インディアペールエールの略称。イギリスからインドに輸送するため、麦汁濃度を高くしてホップをたくさん使用したことが由来。
昨年は8,000リットルのビールを醸造し、東京のクラフトビール専門店やビアパブに販売。「おかげさまで、昨年は醸造した分すべてを販売できました。今年は1万リットルの醸造と販売を目標にしています」と、代表で醸造責任者の岩田貴之さんは話す。

アメリカ帰りの幼馴染から話を聞いて、「やる!」と即決。

管理栄養士の資格を持ち、調理の仕事をしていた岩田さん。「もともとお酒が好きで、ただ飲むだけでなく、醸造に漠然とした憧れはありましたね」。地元・十日町とその周辺には酒蔵も多くあり、クラフトビールを作る醸造所も数軒あることから、日本酒の蔵やブルワリーの見学も好きでよく行っていたそう。

そんな岩田さんにある日、東京で働く幼馴染から「一緒にビールを作らないか?」と連絡が入る。聞けば彼は、アメリカでインターンをしていた時にアメリカのクラフトビール文化に魅了されたとのこと。各地でクラフトビールを味わい、醸造所を見て、自分もブルワリーを持てたらと考えたそう。さらに投資家から資金調達の話も取り付けていた。これに対し、「やる!」と二つ返事をした岩田さん。「これだ!というものに出会った感覚でした。新しいことができる、楽しく働ける、と即答でしたね」と笑う。

2018年、岩田さんは会社を退職し、幼馴染は東京で勤務を続けながらブルワリー設立に動き出す。しかし、投資家からの資金調達はこちらに回す予定の資金の回収が難航しているとのことで、話が立ち消えになってしまう。「もう僕は、南魚沼市のストレンジブルーイング(現在休業中)さんでビール製造の研修に入っていたので、後戻りはできませんでした」

醸造開始直後にやってきたコロナ禍。それでも諦めない。

資金の当てがなくなった二人。醸造所の土地は自己資金を投じて取得することに。開業資金の相談に行った銀行から醸造だけではなく、ビアバーを併設したほうが良いなど、さまざまなアドバイスを受け、なんとか融資を受けられるまでに至った。資金が揃い、醸造設備が整うまでの間、ストレンジブルーイングでの受託製造という形で、初めてのビールを仕込む。2019年12月のことだった。

醸造設備の完成と、ビアバーのオープンを2020年4月と設定していた二人。しかし、年が明けた頃から、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、当初予定していた計画が大幅に狂うことに。ビアバーはなんとか間に合ったものの、緊急事態宣言下でのオープンとなった。その後醸造設備が揃い、二人が思い描くビールを仕込んだ。「これまでアルコール度数がやや足りないとか、完全に納得のいくものにならなかったことはあるけれど、大きな失敗もなく、思った味にならなかったことはないですね」と話す岩田さん。「当初の計画が変わって、資金調達や設備が遅れてしまって、その分ストレンジブルーイングさんで1年間しっかりと研修できたので、結果としては良かったのかもしれません」

早く醸造に集中できるよう、経営を安定させたい。

さまざまな紆余曲折を経て起業、醸造に至った岩田さんたち。今もコロナ禍の中、合間を縫ってイベントに出店したり、インターネットで販売したりと奮闘を続けている。「いい時を知りませんからね」と自嘲気味に笑う岩田さんだが、それでも明るい表情なのは毎日が充実しているから。「ビール醸造家の仕事とは、ひたすら酵母のご機嫌を取るお世話係のようなもの。今は酵母が本当にかわいくて」。そしてIPAの本場・アメリカのトレンドも参考にしながら、もっと多種多様なクラフトビールを提供していきたいと意気込む。「日本には4つの大手ビールメーカーがあり、その味が定着していますが、本来ビールはもっと自由なものなんです」

現状については「結果論ですが、投資家でなく銀行から資金を調達してよかったと思います。投資家の意見を聞かなくてはならないから、自分たちの作りたいものを作れたかどうか分かりません」と話す。また、経営面でのサポートも心強いという。これまでに、新たな設備投資、資金の借り換え、従業員の雇用など、共同経営者である幼馴染とともに「早め早めの策を打つことができています」という。「僕としては、醸造だけに集中して、早く設備をフル稼働させたい。そのためにはまず経営を安定させないといけない。今はそれに向けて頑張っているところです」

新潟県信用保証協会のサポート〈 株式会社 醸燻酒類研究所の場合 〉

新潟県信用保証協会のサポート

●創業後のモニタリング・フォロー
●マーケティング、プレスリリース作成のアドバイス
●借換による資金繰り支援

担当者からのコメント

十日町は地公体の積極的な支援もあり、創業者が多い印象です。中でも岩田さんは個性的なビール造りやイベント出店などに積極的に取り組まれ、バイタリティ溢れる創業者です。定番のIPAはもちろんのこと、季節のビールも是非味わってみてください。

創業を考えている人にアドバイス

困った時はすぐに銀行や信用保証協会へ相談を!

資金繰りが厳しい時、新しい事業を考えている時など、ちょっとでも困ったことがあったら銀行や信用保証協会など、信頼できる機関へ相談を。僕たちも醸造をはじめたタイミングでコロナ禍となり、当初の計画を変更せざるを得なくなりました。共同経営者の幼馴染ともいろいろ相談しているのですが、そこで出た答えには、必ず銀行のジャッジを仰いでいます。

株式会社 醸燻酒類研究所(じょーくんさけるいけんきゅうじょ)

設立:2019年12月
所在地:十日町市本町5-55-8
業務内容:酒類製造業、飲食業

アメリカのクラフトビールに魅了された岩田さんと幼馴染の二人で創業。年間1万5千リットルの製造能力がある醸造施設では、ホップのアロマが楽しめる「IPA」を中心に、自分たちが飲みたい美味しいビールを醸造。併設のバーでは、フレッシュなクラフトビールが1杯500円から楽しめる。

店名・屋号の由来

もともと幼馴染から「研究所」「ラボ」を入れたいという希望がありました。「醸燻(ジョークン)」については、僕が趣味で燻製をやっていることや、いずれスモークビールも作ってみたいということで酒類醸造の醸と、燻製の燻を組み合わせました。

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