転職して知った経営の面白さ。事業譲渡にともなって新規創業へ。
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以前は建設会社のサラリーマン。今の姿は全く想像していなかった。
「お米も作っているし、化粧品も販売しているし…製造業?小売業?業種をひとつに表現することは難しいかもしれません」と話すのは、2022年にN'ismを設立した猪股裕樹さん。化粧品を扱っているとあって、おしゃれでスマートな雰囲気だが「でも僕、以前の仕事は建設業界の職人だったんですよ。ニッカボッカを履いて、屋外の現場で働いていました」と笑う。
「屋根や壁を施工する建設会社で親方職をやっていたんですが、怪我をしてしまって。その時にハローワークで見つけたのが、前職なんです」。猪股さんが入社したのは、テラヘルツテクノロジーを応用した農業資材と美容品の製造・販売を行っている会社。「社長の運転手やスケジュール管理をするという内容だったので、『これなら自分でもできるかな』と軽い気持ちで応募したのですが、入ってみたら経営をばっちり学ぶことになってしまって」と振り返る。
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全国の経営者と交流するうち、経営をやりたい気持ちが芽生える。
前職で行っていたのは、現在のN'ismが行っている事業とほぼ同じ。農家をまわり農業資材を提案しながら、買い取った米の売り先を開拓。美容品を売るために美容ディーラーや美容室へ営業するなど、社長とともに新潟県内外を奔走した。この間に、経営者の姿を間近で見ることができた猪股さん。「社長の口癖は『自分がワクワクするものをビジネスにすること』。上手くいかないことやつらいことがあっても、生き生きと仕事をしている姿に憧れました」と、特にメンタリティの部分で影響を受けたそう。
また、青年会議所に入ったことも大きく影響したという。社長が卒業する(所属は40歳まで)タイミングで入会し、3年間所属したが、最後の1年は全国青年会議所の仕事をすることに。新潟県内はもちろん全国の中小企業経営者と交流することで「自分も経営をやってみたい」という気持ちが芽生えるようになったそう。「働き始めた当初、社長は『猪股は社長業をやってみたいのかな?』と思って自分にいろいろ教えてくれていたそうなんです。そんな自覚はなかったので、不思議なものですね」と猪股さんは話す。
やってみないかと話を聞いた時は、断る理由はなかった。
さまざまな出会いと経験を積み上げながら、入社して5年が経った頃。テラヘルツテクノロジーを活用した水質浄化事業が多忙になってきたため、社長は思い切って農業事業と美容品事業を切り離す決断をする。事業の譲渡先は、もちろん猪股さんだ。「取引先、従業員がすでにいる状態での新規創業ということになります。ゼロからの出発ではないにせよ、事業をスムーズに継続していかないといけないので、それはそれで大変でしたね」と話す。
まずは運転資金の確保。金融機関からの借り入れのほか、自己資金も用意。さらに青年会議所の仲間も出資してくれたという。事業計画書の作成や各種補助金の申請もほぼ一人で行った。「どれも青年会議所で経験してきたことだったので。青年会議所の活動は大変だったけれど、学ぶことが大きかったです」
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出会いがもたらす刺激、学びを、ビジネスに活かす。
信用保証協会のサポートである専門家派遣事業の中で、特にSNS運用のアドバイスは、情報発信に大きく役に立ったそう。「情報発信はすべて自分一人でやってきたので、外部からの指摘はとてもありがたかったです。特にSNSは迷走しまくっていたので…(笑)」と話す。現在、N'ismで取り扱う商材カテゴリは3つあるが、それぞれターゲットが全く異なる。そこでインスタグラムのアカウントを3つに分けたところ、効果的に発信できるようになったという。
「お米は現在ヨーロッパやドバイなどへ売り込んでいますが、有機栽培なので出荷できる量が少なくて。仕入先の農家も増やしていかないと…」「サウナ用商材として、サウナハットを考えています。国産の羊毛を作る牧場があるんですが…」と、この先のプランを次々に話してくれる猪股さん。その原動力は「出会い」だと言います。「前職の社長、青年会議所で知り合った経営者の皆さん、無農薬栽培に取り組む農家さん…これまでにご縁のあった方々から刺激をもらっています」。すべての出会いが有機的に結びついている、そんな印象を受けるのは、猪股さんが「ワクワクすることビジネスに」を体現しているからかもしれない。
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新潟県信用保証協会のサポート〈 株式会社 N'ismの場合 〉
新潟県信用保証協会のサポート
●SNS発信など広報のアドバイス(外部専門家派遣)
担当者からのコメント
猪股さんとは専門家派遣事業で初めてお会いしました。その際、専門家の話に熱心に耳を傾け、積極的に質問する様子から、事業に対する熱意を感じました。また、新たな展開も考えていらっしゃるので、どのような事業が生まれるのか今から楽しみです。その熱意で、出会いを新しい挑戦の原動力に変える猪股さんを今後も応援しています。
創業を考えている人にアドバイス
やってみないとわからない!恐れずに挑戦してみよう!
まだ経験の浅い自分が言うのもなんですが、難しく考えずに、まずは走り出してみてもいいんじゃないかと思いますね。僕も以前はガチガチのサラリーマン思考でしたが、いろいろ経験するうちに自分で動いて、判断したりできるようになりましたから。失敗や困難を恐れずに、チャレンジしてほしいですね。
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株式会社 N'ism(エヌイズム)
設立:2022年11月
所在地:新潟市江南区元町1-4-3
業務内容:製造業・卸業・小売業
最先端の技術「テラヘルツテクノロジー」を応用した独自の肥料を農家へ販売。これを用いて無農薬・無化学肥料栽培で育てた米を買い取り、「凄米(すごまい)」というブランド名で国内外へ販売している。また、テラヘルツテクノロジーを使った美容品の製造・販売も行っている。
店名・屋号の由来
社名の由来はNatural、Nature、Need、Niigataの頭文字を取りました。ismは主義という意味で、「人にも地球にもかけがえのない自然を大切にした商品を発信したい」という想いが込められています。