歴史ある宿を未来へつなぐ
弘法大師が錫杖をついて湧出させたという伝説を持つ、新潟県阿賀野市の出湯温泉。
江戸末期に創業した「大石屋旅館」を未来へつなぐため、特別経営支援チームが立ち上がりました。
コンセプトを見直し、理想の姿を目指す
出湯温泉はじまりの地・華報寺の門前に佇む「大石屋旅館」。7代目となる小林康彦さんは、女将の陽子さんと共に江戸末期から続く旅館を夫婦で守ってきた。そこに新型コロナの影響が直撃。これまで頼みの綱となっていた地元客の利用が減り、苦境にあえいでいた時、協会特別経営支援チーム担当者の訪問が小林さんにとって救いの手となった。
「正直なところ、毎日の運営だけで手いっぱいになっていました。融資を返済するためにも、まずはコンセプトを見直し、売り上げUPを目指して毎月の宿泊客数を4組増やそうとご提案いただきました。その結果、全国からお客さんが来てくれるようになったんです」。過去に金融機関から設備資金を借りたことはあったものの、「運転資金を借りたのはこれが初めて」と小林さん。売り上げUPによって、老朽化した施設の修繕費に備えるためにも、宿の魅力を最大限に発信しようと動き出した。
サイトリニューアルで集客力UP
集客数を増やすために取り組んだのはサイトのリニューアル。見直したコンセプトに基づき、温泉や料理の魅力、伝えたいメッセージが明快になるよう工夫した。2024年春からはお客さまアンケートにも挑戦。改善点にもしっかりと向き合った。
経営サポートを経てうれしい変化を実感
宿泊施設のある温泉地数が144件を数える新潟県は、全国屈指の温泉王国。その中でも、開湯から1200年の歴史を持つ出湯温泉は「新潟最古の湯」として知られ、歴史ある温泉に焦点を当てたサイトリニューアルを行った。新サイトは、大石屋旅館に泊まることで出湯温泉の良さ、雄大な自然の心地良さ、そして、阿賀野市の食の豊かさにも気付かせてくれることが伝わるように変更されている。
「サイトを一新したことで新規のお客さまが増えて驚きました」と小林さん。これまで以上に海外からの予約が増えてきているという。「この間は台湾人の親子が利用され、オーストラリアからカップルもいらっしゃいました。今後さらにインバウンド対応が必要になるでしょうし、お客さまアンケートからバリアフリー化の必要性も見えてきています。より良い宿を目指して、これからも進化していきたいです」。
協会の経営サポートを受けたことで、時代に合わせたおもてなしを意識するようになった小林さん。今後の展開にも注目が高まる。
新潟県信用保証協会のサポート〈有限会社大石屋旅館の場合〉
サイトリニューアルで特別な宿泊体験に焦点を当てる。
担当者の着眼点
設備の老朽化が進み、今後の修繕費がかさむことを見据えていました。さらに、ゼロゼロ融資の返済も始まることから、売り上げの増加を図るための集客回復に取り組むことにしました。
サポート内容
コンセプトを見直し、新コンセプトに基づいた内容へサイトをリニューアルしました。旅館の魅力、ご夫婦がお客さまに伝えたかったメッセージを写真と共に分かりやすく表現しています。情報発信に力を入れただけでなく、お客さまアンケートを実施することでより良い旅館づくりを進めています。
支援担当者の声
意欲向上にもつながる大きな変化。
宿泊客が増え、売り上げを伸ばすことができました。公式サイトを見て「この旅館いいな」と感じてくれる人が増えたのではないでしょうか。今回の変化が大石屋旅館さんの自信になり、事業に対する意欲向上にもつながっていけばうれしいです。
有限会社大石屋旅館
新潟市街から車でおよそ40分。五頭山の山懐にある出湯温泉の宿。自家源泉を100%使用した温泉は新潟県内最古の天然ラジウム温泉。愛犬家の間では「ペットと一緒に泊まれる秘湯の宿」としても親しまれている。春夏秋冬の海の幸と山の幸、阿賀野市産の野菜や米をふんだんに取り入れた食事にも定評がある。