新規開拓と会社のスリム化で経営改善。高い加工技術を活かし、脱下請けを目指す。
数千万円の未使用金型を廃棄
三条市に本社工場を構える金型メーカーのワンロード。自動車や建設機械に使われる部品用金型の開発・設計から製作まで一貫して手掛け、着実に業績を伸ばしていた。しかし2008年にリーマン・ショックが発生。「当時はスポーツカーの金型開発に取り組んでいました。でも結局、その車は未発表のままプロジェクトが終わってしまって。1つ約1,000万円の金型を、廃棄するしかありませんでした」と井上正栄代表取締役は振り返る。関連する仕事もすべて飛んでしまい、経営者としても、開発を強みとする会社としても非常につらい思いをした。
他の仕事も中止が相次ぎ、売上は急激に減少。2011年頃から資金繰りが悪化し、金融機関を通じて新潟県信用保証協会に相談することにした。
技術力を活かし新規開拓に注力
「保証協会さんは非常に親身になって対応してくださり、派遣していただいた中小企業診断士の先生には5年にわたり面倒を見てもらいました」と井上社長。掲げた目標は2つ。売上増加と粗利率の改善だ。まず売上増加のため新規開拓に注力し、展示会にも積極的に参加。そして粗利率改善のため作業フローを見直し、役割分担を明確にした上でコスト削減や多能工の育成に力を入れた。
苦しい時期を耐え忍び、ようやく状況は上向きに。保証協会のサポートで新たな設備投資も実現した。高い加工技術を活かし、他社では難しい案件も受注。工場では若手社員や女性も活躍する。従業員一丸となり、強みを活かした価格競争に巻き込まれない仕事の獲得を目指す。
自社ブランドで新たな一歩を
新型コロナの影響ももちろん受けた。「売上の落ち込みはリーマンの時以上。ですが保証協会さんとやってきた会社のスリム化などの経験が生きているためか、苦しいですが大きな赤字は出さずに済んでいます」。
2022年7月にはオーディオアクセサリーの自社ブランド「セレニティ」をリリース。レコードを再生する際の不要振動を徹底的に取り除き、レコード盤に刻まれた溝の音だけをピュアに表現する。先頃導入したマグネシウムの加工設備を利用し、井上社長自身の趣味も活かした新事業だ。「ものづくり一辺倒だったので、売るのは初めて。いろんな方からサポートをいただきながらやっています。『いい音ですね』という喜びの声をじかに聞けるのが嬉しいですね」と楽しそうに話す。苦しい時こそチャレンジを。ワンロードは新たな一歩を踏み出した。
新潟県信用保証協会のサポート〈 株式会社ワンロードの場合 〉
金融支援と経営支援を並行し、課題の根本的解決を図る。
1/相談のきっかけ
リーマンショック後に急激な売上減少を強いられ、2011年頃から資金繰りが悪化したそうです。
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金融機関を通して当協会にご相談いただきました。お付き合いは以前からさせていただいていました。
2/課題
外部要因に左右されやすい事業内容
自動車関連の仕事が多い同社。景気や新型コロナといった自社では対応しきれない外部要因に左右されやすい状況がありました。
返済負担が大きい
2011年頃から資金繰りが悪化。その後業況は改善したものの、新規投資により返済の負担が重くなっていました。
3/解決策
専門家派遣
中小企業診断士(外部専門家)を派遣。経営課題と改善の方向性について助言・指導していただきました。景気などの外部要因に左右されない企業になるため、自動車業界に限らない新規開拓をご提案しました。井上社長からは「従業員一人一人との面談や年2回の定期訪問など、きめ細かく対応していただいた」との言葉をいただきました。
経営サポート会議の開催
取引金融機関の合意をとり、リファイナンス(借り換え)を実施。制度融資を活用し、返済負担の軽減を図りました。
成果
新規開拓が軌道に乗り、幅広い分野のクライアントからの受注が増加。現場にも活気が広がっています。社長の趣味を生かした自社ブランドもスタートし、今後への期待も高まります。これからも保証協会としてできる限りのサポートをしていきます。
株式会社ワンロード
1953年創業 三条市福島新田
鍛造用金型製造工場として創業。自動車、自転車、建設機械などの部品用金型を設計・製作する。精密小物金型から最大8,000tクラスのプレス鍛造金型、1,000tクラスのHVSC鋳造金型まで幅広く対応できる設備と加工技術を有する。従業員数18名。